俺は日本と違って最後まで無条件降伏なんかしなかったから、女達との３５年戦争に勝利できた
日本の負けで幕を閉じた
日本は「戦争放棄」をして、表面上の平和を手に入れた
俺と女達との悲惨な闘いも、
十五年戦争の末期の日本のようだった
最初は、勝てるつもりでいた
少なくともこんなボロボロされるなんて、
まったく想定していなかった
それが気がついたら、追い込まれていた
追い詰められていた
そんなはずじゃなかったのに、
いつからこんな苦境に陥ってしまったんだろ
苦境から脱却しようと、もがけばもがくほど、
より強烈な反撃に合い、
よりボロボロになってしまった
自分が女達からこんなにボロボロにされてしまうなんて、
昔は想像もしてなかった
ー 俺はもう、「恋愛放棄」をしないと、表面上の平和すら得られないのか ー
そう気づかされはじめた
最重要防衛拠点だったサイパン島 バンザイ突撃
ガダルカナル島 全滅
頑張って作ったつもりの戦艦大和が、
「これで勝てる」と思ったはずの戦艦大和が、
時代遅れの長物になっていた
頑張って作った戦艦大和も、特攻作戦で使うしかなくなっていた
頑張って作った戦艦大和は、
沖縄救出どころか、
近づくことすらかなわずに
米軍戦闘機４００機に囲まれて
あっという間に鹿児島県沖で撃沈した
そうして、ボロボロにされた日本は
無条件降伏して、
戦争放棄した
俺は、日本とは違う
無条件降伏なんかしなかった
どんなに女達からボロボロに踏みにじられ続けても、
恋愛放棄はしなかった
本土決戦も覚悟だぞと
たとえ最後の一兵になっても、戦い抜くぞと
竹槍１本しかなくても、それでもＢ２９に立ち向かうぞ
竹槍１本にしがみついてでも、恋愛放棄なんか絶対にせんぞ
そう俺は、あがき続けた
バンザイ突撃を繰り返した
当然、機関銃で滅多打ちにされ、
火炎放射器であぶられまくった
そんな俺を
フラれた女本人はもちろん、その周囲の連中までも、
堂々と露骨に嘲笑し、侮蔑してきた
それでも俺は、最後まで戦い抜いた
恋愛放棄なんかしなかった
結果、悲惨な戦争は３５年も続いた
悲惨な３５年戦争の、最後に
いきなり、突然、なんの前触れもなく
神風が吹いた
神風は吹いた
俺が神風を吹かせたんだ
俺が無条件降伏なんかしなかったからだ
日本と違って
