モテない男にしか打てない逆転満塁サヨナラホームランがある
モテない男にしか打てないホームランがある
それまで、死球や危険球を何発も何発も食らい続けて、
ボロボロにされて、
それでももう一度、バッターボックスに入って、
バットを構えようとした男だけが
打てるホームランが、ある
普通は死球なら打者は出塁、危険球ならくわえて投手は退場処分となる。
しかし、打者がモテない男のときにだけは、
ン愛ゆえか、投手はどれだけ危険球をぶつけても許される
普通は打席に入って構えてから投手は投球に入る。
しかし、打者がモテない男のときにだけは、
投手は打相手が席に入ろうとしたその瞬間に、危険球をぶつけてくる
そうやって、何度も何度もボロボロにされ続けて、
まともに打撃をするどころか、
バットを構えることも、打席に立つことすらも、
困難な身体にされてしまった
しかし、それでももう一度、もう一度、
必死に二はをくしばって、
打席に立って、構えをとろうとしたんだよ
危険球くらい続けても、乱闘に走るのではなく、
野球をやめてしまうのではなく、
もう一度立ち上がったんだよ
そんなモテない男にしか、打てないホームランがあったんだよ
そんなモテない男にしか、見えないスタジアムの風景があったんだよ
そんなモテない男がレフトスタンドに高々と打ち上げた、
逆転満塁サヨナラホームランを、
阪神タイガース球団史上、最大の音量の、
1935年の大阪タイガース創設以来、最大の音量の
六甲おろしの大合唱が、迎えてくれたんだよ